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26 警察捜査にも活用される音声感情解析システム(従来方式の歴史と問題点)|音声活用ブログ
2021.12.13
Nemesysco社テクノロジー
26 警察捜査にも活用される音声感情解析システム(従来方式の歴史と問題点)
10月22日にホームページにて発表しましたが、当社の音声感情解析システム“ESAS Security Service”が警察の複数の捜査で活用されました。内容は明らかにできませんが、関係者発言の真偽に関することです。当社のシステムは嘘発見を目的にしたものではありませんが、嘘が語られている可能性をある程度推定することが出来ます。当社のソフトのベースになるソリューション供給元であるイスラエルのNemesysco社でのトレーニング資料に真偽検出の方式に関する解説が記載されていますので、その一部をご紹介します。
Nemesysco社のThe foundations of Good and Bad (An introduction to the field of “Truth research») と言うトレーニング資料に、真偽検出に関する説明が載っています。その中に嘘検出に関する方式について解説した項目がありますので、ご紹介します。
嘘検出の方式にはポリグラフ(嘘発見器)で用いられている方式で、被験者が尋問を受けている最中の血圧や脈拍数などの生理学的な変化を利用する方式、緊張時に人間の筋肉の振動が変化し声の周波数が微妙に変化することを利用したVSA(Voice Stress Analysis)と言われる音声真偽判定技術を用いた方式が用いられてきました。現在でも多くの捜査機関で用いられている方式です。
しかし、VSA方式には課題が多くあり、真偽判定の信頼度や安定性は必ずしも高くありません。嘘は被験者の感情の変化に起因して引き起こされるのですが、VSA方式では嘘は単一の感情に関係していると仮定されています。しかし実際には、嘘は複数の感情に起因しており、発言の信憑性を正確に評価するには複数の感情を分析する必要があります。従来の方式はこれが出来ません。
そこで嘘と複数の異なった感情の関連を検出する技術が開発されました。それは当社がゴールドパートナーになっているNemesysco社開発のLVA(Layered Voice Analysis)です。当社が警察の捜査に協力している音声感情解析システムはこのLVA方式を用いています。これにより発言の信憑性評価の信頼度が高く安定したシステムを提供できるようになりました。
このブログでは嘘発見の歴史を紐解きながら従来の方式の問題点を明らかにしたいと思います。
容疑者が嘘をついているかどうかを調べる方法は古代から試みられてきました。呪文や宗教を利用して「真実を話さないと地獄におちるぞ。」と脅しや、拷問による自白の引き出し、占い師が真偽を決めたりなどの科学的根拠のない方法が用いられてきました。
科学的な嘘検出技術(と称される)の成果が出てきたのは19世紀に入ってからです。
アンジェロ モッソーというイタリアの生理学者はニューロイメージング技術の発明者として知られています。彼は被験者が尋問を受けている最中の感情や恐怖を研究する為に「プレスチモグラフ」(Plethysmograph)と呼ばれる測定器を利用しました。
また、やはりイタリア人で精神科医のチェーザレ・ロンブローゾ(Cesare Lombroso)は医療機器を改造し、警察の尋問中に犯罪容疑者の血圧と脈拍数の生理学的変化を測定するために使用しました。彼は、犯罪容疑者の欺瞞から真実性を区別する手段として測定器を使用し、成功をした最初の人物であるという栄誉が与えられました。
20世紀に入ると、これもまたイタリア人の心理学者ヴィットリオ・ベヌシ (Vittorio Benussi) がニューモグラフ(Pneumograph)と言う呼吸パターンを記録する機械を用いて、「嘘をついた」後にその人の呼吸パターンに不規則性が表れることを発見しました。
ポリグラフ(嘘発見器)は1921年に発明されたと言われています。カリフォルニア大学博士で警察官のジョーン・A・ラーソン(John Augustus Larson )が血圧と呼吸数の両方を測る機器を発明し、バークレー警察で使用したと言われています。
アメリカ人の弁護士で心理学者のウィリアム・マーストン (Dr. William Marston) は、不連続収縮期血圧の検出器を発明しました。彼はこの性質を利用した嘘発見器を普及させようと試みましが、米国心理学会からは現在も支持されていません。
音声を利用した真偽判定の試み
以上のように、初期の嘘発見技術なるものは、人間が嘘をつくときの呼吸や血圧の 変化など生理学的変化を利用しようとしたものでした。最近のポリグラフ機器は、運動感知椅子、センシング機能を備えたフロアマットレス、異なる生理学的応答タイプのリモートセンシングデバイスなどがあり、現在でも一部の警察や情報機関で使われていますが、その正確性に関しては十分に検証されている訳ではありません。被験者が汗をかく、心拍数が変化するなどの生理的現象は原因が嘘をついたことによるとは限らないからです。「嘘をつくならば心拍数が変化する。」が真だとしても逆の「心拍数が変化したならば嘘をついている。」とはなりません。
音声を利用した最初の真偽判定技術は「音声ストレス解析」VSA(Voice Stress Analysis)と言われるもので米軍の心理学者Allan D. Bell, Jr., Wilson H. Ford, and Charles R. McQuistonによって捕虜尋問用に発明され、1972年に「心理的ストレス評価器」PSE (Psychological Stress Evaluator) と言う名称で特許を取得しました。
これは、人間の筋肉は正常時は低周波(8ヘルツ~14ヘルツ)の振動(「Lippold Tremor(リポルド・トレモル)」と言います)をしており急性ストレス時にはリポルド・トレモルの周波数が4~6ヘルツに下がるという発見に基づいています。筋肉の動きは声に反映され、声の低周波領域での周波数を分析することにより「ストレス」レベルを推定します。
この方式は現在でも用いられています。しかし、VSAが欺瞞を検出する正当な方法として受け入れられる為には、さらなる研究が必要との指摘もあります。
https://www.liedetectioninstitute.com/voice-stress-analysis/
従来の真偽発見技術の問題点
上述した真偽発見技術のシステムと方法は、嘘(感情)に対する内部身体反応を検出することによります。VSAでは嘘を引き起こす感情は単一の感情であると仮定されていました。 実際、嘘はいろいろな非常に異なる性質の感情が組み合わさり発現しますが、その際同じ生理的反応を引き起こします。 従って、生理的な反応を調べるだけではこれら複数の感情(ストレス、覚醒、対立など)を区別することが出来ません。そこで複数の異なった感情を検出する技術が開発されました。それがNemesysco社開発のLVA(Layered Voice Analysis)です。この詳細については次回のブログで紹介したいと思います。
以上
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