BLOG
音声活用ブログ
27 警察捜査にも活用される最新音声感情解析システムLVA|音声活用ブログ
2022.01.05
Nemesysco社テクノロジー
27 警察捜査にも活用される最新音声感情解析システムLVA
前回のブログで嘘検出の歴史を簡単に説明しました。音声による検出はVSAと言われる技術が1970年代に米軍により開発され実際に使われていますが、課題もある事を説明しました。当社ではイスラエルのNemesysco社開発のLVA(Layered Voice Analysis)を用いてVSAの課題を解決しています。このブログでは当社の基本ソフト供給元であるネメシスコ社が開発したLVA技術を紹介し、従来の技術と何が違うのかを解説します。
VSA (Voice Stress Analysis) では嘘を引き起こす感情は単一の感情であると仮定されていました。被験者のストレス感情の程度を測定して発言の信憑性を推定するものです。ストレス検出は、人間の筋肉が正常時は低周波(8ヘルツ~14ヘルツ)の振動(「リポルド・トレモル」)をしており、急性ストレス時にはリポルド・トレモルの周波数が4~6ヘルツに下がるという発見に基づいています。リポルド・トレモルが被験者の声に反映されるので声の低周波分析によりストレスの程度を測定するものです。
嘘と人間の感情には密接な関係があります。むしろ感情が嘘を誘発すると言って良いでしょう。Nemesysco社の資料によると、嘘をつく動機と感情との関係を分類すると下記の6つになります。
嘘をつく6つの基本的な動機と感情
上図の様に、感情要素(ストレス、興奮、困惑、葛藤、覚醒など)と嘘には密接な関係があり、様々な感情要素が複合して嘘が誘発されることになります。VSAでは、嘘をついた時のストレスに伴って生じる生理学的な身体変化(リポルド・トレモルの周波数変化)のみを使って嘘判定を行いますので複数の感情要素を分析して嘘をついていることを推定しているものではありません。
そこで登場したのがNemesysco社のLVA(Layered Voice Analysis)層別音声解析です。これはさまざまな感情要素を別々に数値化することが可能です。LVA とVSAはしばしば混同されますが、両者には技術的にも運用的にも共通点は一つもありません。
LVA は身体的なリポルド・トレモルは利用せず、異なる感情要素を認識するために、話者の音声スペクトラム(音声の周波数分布)を全てモニターし、音声波形の時間的な変化を識別することにより感情要素の強弱を数値化します。LVA技術のメカニズム概要はブログのLVAテクノロジー1と2に記載してありますのでご参照下さい。
Nemesysco社は今までさまざまな状況での被験者の感情要素の変化を採取し集積しています。そこから、正常状態での感情反応と著しく異なる感情反応を示した場合に、嘘をついている確率が高いと推定することが出来ます。
例えば、救急車呼ぶ際の状況を考えてみましょう。筆者は何年か前に母親が倒れて救急車を呼んだことがあるのですが、電話で話していてもうまく発話ができず自宅の住所も正確に言えない程慌ててしまい、その際非常に強いストレスを体感しました。LVA技術を用いると、この時の声から得られるストレスに関する感情値は非常に大きい値を示します。
また、LVAではAnticipationと言う感情値を出力させることが可能で、これは期待と直訳されますが、話者が相手にどう伝えるかの意識の指標となり、話の内容が「建て前」、「欺き」、「演技」、「パフォーマンス」である場合に大きな値を示します。つまり相手にどう伝えるかを強く意識している状況を示唆しています。「話者の演技度」と言っても良いでしょう。救急車を呼ぶ時には話すのが精一杯で、相手にどう伝えようかと考えるのは二の次となります。筆者自身も通話相手の係官から何度も「それはこういう事ですか?」と確認を促されながら話しました。すなわち演技をする余裕がない時にはAnticipationと言う感情値は低くなります。
この状況をまとめると、救急車を呼んでいる時の感情値は、通常であれば下の図のようになります。
ですが、この図の様になっていない場合は、話者の申告内容と、感情挙動に『矛盾』がある事を示唆します。仮にこれを、事故や事件の第一通報者の音声を解析した結果の挙動とした場合、緊急通報時に、被害者の安否を心から心配していない状況とは、、?といった考え方になります。
下図は話者の『ストレス』と『演技度』の時系列的な感情値の値をグラフにしたものです。横軸は時間、縦軸は感情値の値です。図を比較すると、それぞれ明瞭な差が見受けられている事がわかります。
このようにして状況や発話内容と、感情挙動の不一致を見抜く事により、着目すべきポイントや、真実を述べていない可能性を可視化してくれます。
Nemesysco社では「嘘発見器」は存在しないとしています。感情値の出力が通常の場合と異なる事を検出するのであり、それにより話者が嘘をついているかどうかの判断はあくまでも音声感情解析システムのユーザーである趣旨のことを述べています。
以上
関連記事
ピックアップ
- CATEGORY
- Nemesysco社
- コールセンター
- 感情解析ラボ(活用事例)
- 不正防止
- 金融機関
- 保険金詐欺
- ストレス
- お知らせ
- テクノロジー
- マーケット
- 人気記事
- 39 用途が拡がる音声感情解析ソリューション (聞き手理解確認ソリューションについて1)
- 10 感情分析と感情解析
- 18 リモートワーク(在宅勤務)時代の営業活動と感情解析
- 49 なぜ音声から感情がわかるのか(2)
- 29 コールセンターの優秀人材を確保する最新方法
テーマ
- 感情
- パスカル
- 等ラウドネス曲線
- 音の性質
- デシベル
- 音速
- 周波数
- LVA
- フォーマント
- 解析
- コールセンター
- 運営効率
- パーソナリティー
- 性格診断
- オペレーター感情
- モチベーション
- コールセンター運営
- サイエンスラボ
- 音声解析研究
- 応対品質
- 基盤技術
- ビジネス予測
- 感情解析ビジネス
- 米国心理学会
- 発声機構
- 聴覚機構
- 米国特許
- 学術論文
- 周波数分析
- Nemesysco
- ネメシスコ
- 人事面接
- 聞き手。理解度、音声感情解析
- 聞き手
- 理解度
- パーソナルキャラクター
- ソーシャルスタイル
- DISC理論
- メタバース
- 音声感情
- AI
- コールセンター、品質管理
- 音声感情解析
- 期待効用理論、効用関数
- ベルヌーイ
- ESAS
- 感情解析ラボ
- プロスペクト理論
- 価値関数
- 言語
- 不随意感情情報
- 意図的感情情報
- 音声感情解析、AI、機械学習
- 音の波形
- フーリエ変換
- Chat-GPT、AI、感情、音声
- 警察
- 情報機関
- 人事部門
- 面接
- 採用
- ストレスチェック
- リモートミーティング
- ロボット
- エンタメ
- カラオケ採点
- 学習理解度把握
- 愛情チェック
- 役割
- 機能
- 教育、中国、学習量、学習効率
- 保険請求
- 不正申告
- 保険
- 詐欺
- アレクサ
- Alexa
- amazon
- アマゾン
- 住民感情、コロナ、自治体
- エモーションロジック
- 不正請求
- 保険金詐欺
- Insurance Fraud
- 保険金
- Voice Screen
- ストレス