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音声活用ブログ

音声の発声機構と聴覚機構について基本的な事項をまとめました。

2020.10.30

テクノロジー

7 音声の性質(2)

音声の発声機構と聴覚機構について基本的な事項をまとめました。

 前回のブログでは音の物理的性質と等ラウドネス曲線について解説しました。今回は人間の音声について発声機構と聴覚機構について基本的事項を解説します。

  1. 発声のしくみ

   人間が声を出すには声帯と声道と言う2つの部分が重要な役割を担っています。

 

    1)声帯

  声帯は喉にある器官で、肺から送られた空気がこれを振動させ声の音源となります。声の高さを決める器官です。日本人の声帯の前後長は男性で24mmから25mm、女性で16mmから17mmです。発声中は長さが変化します。クラリネットに例えるとリードの部分に相当します。

    2)声道

 「声道」と言う特別な器官があるわけでは無く、喉頭、咽頭、口腔、鼻腔を指します。声帯で発せられた振動する空気が通過し、鼻や口から出ることにより声が出ます。声道の役割はクラリネットに例えると管の部分になり、空気振動を共鳴させる共鳴器の役割を持ちます。クラリネットの管の形は時間的に変化しませんが、声道はグニャグニャしており時間的に形が変わります。これにより声道では声帯からの音をさまざまに調節し声を特徴づけます。声道の長さは男性で17cm程度、女性で14cm程度であり、男性の方が女性よりも長いことが知られています。そのために一般的に男性の方が女性よりも低い声を発します。

 

  発声機構

 声帯で発せられた音源はさまざまな周波数の音を含みます。声道ではその形により特定の周波数の音エネルギーが効率良く伝達され大きな音となります。この周波数を共鳴周波数あるいはフォルマントと言い、声の質を決める重要な要素になります。フォルマントは複数あり周波数の低い順に、第1フォルマント、第2フォルマント…と言う様に数字を当てて呼び、それぞれF1, F2と表記します。音の周波数とエネルギーの関係を示したグラフを示すと母音により特徴的なパターンが現れます。下図を参照して下さい。

 母音ではフォルマントははっきりとグラフに現れるのですが子音では明確なフォルマントは現れません。人間は脳からの発声指示により肺から適切な量の空気が声帯に送られ、声帯が振動します。声帯の形状は脳からの指示に基づき微妙に変化して適切な強度と周波数の空気振動を声道に送り込みます。声道はやはり脳からの指示に基づいて適切なフォルマント周波数で共鳴するように形を変え、空気振動は最終的に声として外部に発されます。

  声と感情

 人間の感情は脳から声帯及び声道に発せられる指示情報に含まれており、感情情報は最終的には声として発せられる空気振動の波形情報の中に含まれることになります。

  1. 聴覚のしくみ

 次に聴覚のしくみを簡単に解説します。聴覚は声だけを対象としたものではなく人間の耳に入る全ての音が対象になります。耳は下図に示すように外耳、中耳、内耳に別れます。外耳は音を拾う収音器の役割であり、中耳にある鼓膜に音を伝えます。鼓膜は空気の振動を感知して増幅しこれを内耳にある蝸牛に伝えます。蝸牛(かぎゅう:渦巻管とも言う)は音の周波数分析を行ってその分析結果を電気信号にして脳に伝えます。

  蝸牛のしくみ

 聴覚機構で最も重要な器官は蝸牛でこの中はリンパ液で満たされています。鼓膜から伝達された時系列的に変化する音波信号に含まれる周波数成分を蝸牛が検出します。すなわち時系列信号を周波数信号に変換する役目を持っています。数学や物理に強い人には蝸牛はフーリエ変換装置であると言うと理解されやすいかもしれません。蝸牛では20~20000ヘルツ程度の周波数が検出でき、これが人間の可聴周波数帯域になります。

 その仕組みですが図に示すように蝸牛の中には基底膜と呼ばれる膜があり、これが振動します。入力波の周波数より最も振幅の大きい場所が異なり周波数情報が場所情報に変換されます。この場所にある細胞が活性化されその電気的刺激が聴神経により脳に伝達されます。これにより脳は音を認識することが出来るようになります。

以上

   


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