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音声活用ブログ
日々の顧客対応の音声を解析し取得した感情データとコールセンターで取得可能な付帯データとの関連性を分析
2021.04.05
コールセンター
音声感情解析レポート(第2回)
~オペレータ感情「エネルギー」とセンターKPI「占有率」の関連性の発見~
ESジャパン株式会社 ビジネス推進部課長 久保田啓介
2021年4月5日
概要.我々、ESジャパン株式会社(CENTRICグループ)は、コールセンター兼サービスサイエンスラボであるCENTRIC株式会社熊本支店で取得した感情データの分析を実践している。日々の顧客対応の音声を解析し取得した感情データとコールセンターで取得可能な付帯データとの関連性を分析し、これまで定量的に証明されてこなかったことを、感情を可視化することで、証明する試みを実践している。日々の応対データは蓄積中であり、研究材料は大量に存在する。第2回のレポート内容として、コールセンター業務に従事するオペレータの感情と占有率の関係性について分析した結果について記載する。
1 分析のコンセプトと仮説
1.1 分析のコンセプト
熊本支店に蓄積された大量の音声から感情パラメータを取得し、オペレータ感情を対象として分析を実施することで、今まで定量的に表すことが難しかったオペレータの感情とセンターKPIとの関連性を発見することが本分析のコンセプトである。
対象をオペレータ感情にした最大の理由は、顧客より感情データを定点観測しやく、傾向を理解しやすいであろうと考えたためである。同一顧客からの問い合わせは比較的少ないのに対し、オペレータであれば、同一話者の感情パラメータデータを継続的に取得することができる。また、過去の熊本支店での研究実績(CENTRIC株式会社感情解析研究室で発見した早期離職リスクの発見:参考[1])もあり早期結果に繋がりやすいと考えオペレータ感情を対象とした。 オペレータ感情を分析するにあたり、まずはオペレータのフラットな感情を取得したいと考えた。日々の電話応対を想定すると、どれだけオペレータが良いモチベーションを保持し電話対応を開始したとしても、顧客の反応(例:お怒りの方の電話対応中では、どうしても萎縮してしまう、構えてしまう)によって左右されてしまうと推測した。
※オペレータへのヒアリングでも、上記例のような感情推移が多くあることが確認されたそこで本分析では、全ての応対において、「顧客が話し始めるまでの、オペレータ感情を対象」としている。(図1)
図1:オペレータ感情反応
1.2 立案した仮説
熊本支店SVから収集した運用現場の意見も考慮し、以下の仮説を立案した。
———————————————
仮説:入電が多い時間帯や夕方帯(オペレータの就業時間の後半)の感情パラメータ(例:EnergyやStress)は、オペレータの精神状態を可視化し、特徴的な挙動を示すのではないか
———————————————
熊本支店のセンター稼働時間は9-21時であるが、多くのオペレータが9-18時又は10-19時で就業している。一日中顧客対応を行っていると、入電の多い時間帯や、夕方帯には疲労による精神的な負担が増加すると考えた。(図2)
図2:時間帯別感情遷移
仮説を立証するため、取得した感情パラメータと忙しさを定量的に表現するための指標である占有率(参考[2])を、時間帯別に比較し、分析を実践した。
2 利用データ及び分析手順
本章では、立案した仮説に沿って、オペレータの感情パラメータから分析する手順を述べる。
尚、実施した手順を表2に記載する。
表2:分析手順
2.1 利用データ
本分析で利用したデータの詳細を以下に述べる。尚、本分析では、平日の感情パラメータの平均を分析データとして採用している。
<感情データ>
・感情パラメータ
対象期間:2021年1月1日~2021年1月31日
対象オペレータ数:34名
対象音源数:12,827音源
<付帯データ>
・時間帯別占有率
対象期間:2021年1月1日~2021年1月31日
対象オペレータ数:34名
2.2 分析手順
表2の手順の詳細を以下に述べる。
2.2.1手順Ⅰ(前処理:対象区間の抽出)
第1章に示す通り、まずはデータの加工を行う。取得できる感情パラメータは、約2秒(正確には会話部の約2秒毎)に1回、表1の感情パラメータの整数を取得することが可能である。
感情パラメータ集合をDi={Di₁,…,Din} と定義する。(尚、約2秒に1回取得した感情パラメータ値の集合体を「セグメント」と記載する)
※仮に音声が100セグメントで構成される場合、D₁,…,D100の多次元配列の集合体となる。
オペレータのセグメントをxi、顧客のセグメントをyiと定義する時、Dk = y1の時 D1~Dk-1 の平均値を音声毎に算出する。
(図3を例とすると、D3 = y1のため、D1~D2 の平均値を算出)
図3:分析対象区間選定
2.2.2 手順Ⅱ(前処理:感情パラメータの正規化)
手順Ⅰにて計算した音声毎の多次元配列(感情パラメータの平均値)をオペレータ別に縦に結合した場合の各列について最大値/最小値を求め、$Y=\frac{(X-X_{min})}{(X_{max}-X_{min})}×100$で正規化をする( X:元データ、Y :変換後のデータ)。これにより、各列は最大値100, 最小値0 のデータとなる。
※尚、本分析では、比較軸が整数となる様に、100倍した値を正規化した値として記載
図4:正規化参考図
2.2.3 手順Ⅲ(時間帯別平均値の取得)
手順Ⅱにより変換した値を、オペレータ別且つ時間帯別(9-21時)で計算する。計算方法は一般的な平均値を採用して算出した。
2.2.4 手順Ⅳ(比較対象付帯データの取得)
本分析の比較対象としては、コールセンターで取得できるデータの中で、「占有率(参考[2])」を比較対象としている。熊本支店で利用しているCTI/PBXで取得できるデータより、オペレータ別且つ時間帯別占有率を算出した。
2.2.5 手順Ⅴ(分析及び考察)
手順Ⅲ及び手順Ⅳにて計算したデータに対して、関連する挙動がみられるか、分析を実施した。
分析の結果及び考察を次章で述べる。
3 分析結果
前章で計算した時間帯別の感情パラメータ及び時間帯別の占有率の関連性について、オペレータ別に分析した結果を以下に述べる。
尚、本分析レポートにおいては、特に特徴がみられた感情パラメータEnergy[エネルギー]について記載する。
【分析結果】(図5)
図5に記載の通り、対象オペレータ34名に対して、時間帯別のEnergy[エネルギー]と占有率の関連性に着目した。
得られた結果として、時間帯によってEnergy[エネルギー]と占有率が関連の有る挙動を示しているオペレータは計21名。内訳を以下に記載する。
- エネルギー高い/占有率高い : 12名 (図5:赤枠部)
- エネルギー低い/占有率低い : 9名 (図5:青枠部)
尚、感情パラメータにおいては、第2章の手順Ⅱにて正規化を行っている為、同じオペレータの中で時間帯による差を考察している。
継続的な比較分析の必要はあるが、本分析において、61.7%のオペレータにおいて、感情パラメータEnergy[エネルギー]と占有率に関連する結果が得られた。
図5:時間帯別感情パラメータEnergyと時間帯別占有率の関連性(一部抜粋)
4 ネクストアプローチ
前章にて得られた結果から、以下に対して継続して分析を実践する予定である。
4.1 アプローチ:Energy[エネルギー]×獲得率
ある時間帯(個人毎に忙しいと感じる時間は異なる)においては、例えば「注文の獲得率が高い」というスポーツにおける、いわゆる『ゾーンに入る』と呼ばれる状態がコールセンターのオペレータの電話応対中でも発生していると仮定する。(図6)
その際のオペレータの感情傾向を定量的に証明することができれば、感情が獲得率に与える影響を数値的に証明できる。
現在、熊本支店のある獲得業務を対象として、
時間帯別日別の獲得率データ及び感情パラメータを分析中である。
図6:Energy[エネルギー]×獲得率コンセプト
5 終わりに
本分析レポートでは、音声感情解析ソリューションESASにより取得した感情パラメータの分析を実施し、従来では定量的に証明できなかったことを実践する取り組みを行っている。
本分析の最終目的として、感情を可視化し、実際のコールセンター運営、まずはCENTRIC株式会社熊本支店で活用しコールセンターのKPI(参考[3])を向上させ収益向上や従業員のメンタルサポートに寄与することである。
本分析はオペレータ感情を対象としたが、顧客の感情についても分析を実施していく予定である。
尚、引き続き、本分析の進捗については、レポートとして記録していく。
参考
[1] ESジャパン株式会社HP
コンタクトセンター・アワード受賞リリース記事
[2] 占有率
占有率とは、オペレータが業務可能な時間のうち、待機(着信待ち)以外の割合。 忙しさを定量的に表現するための指標として活用
https://www.proseed.co.jp/word/000218.html
[3] KPI(Key Performance Indicator/重要業績評価指標
組織の目標を達成するための重要な業績評価の指標を意味する
図:感情パラメータの一部とその説明
第2回熊本解析レポートPDF版はこちら
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